IT超先進国のエストニアでは、あらゆる手続や情報が、簡略化、自動化、透明化されています。

そのおかげで、会社は10分で作れるし、人の犯罪記録は自由に見れる、という話を、エストニアのe-サービスを担う法務省の下部組織「Centre of Registers and Information Systems(RIK)」の職員の方から聞きました。

  • 「e-Business Register」を使えば、会社設立に必要な情報を入力し、項目を選択し(定款もそれで自動生成される!)、発起人を国民IDカードで認証し、手数料をカード決済すれば、わずか10分で必要な情報は送信完了。あとは裁判官が商号の類似性チェックを行い(これは人力)、それが1〜2日で済んで、会社の設立は完了。将来的には商号の類似性チェックを自動化して、一瞬で設立を完了させる予定。
  • 手続きの簡略化、自動化の恩恵を受けるのは、国民だけでなく国の機関も。例えば「e-File」を使えば、警察が事件を立件して捜査し、検察に送検し、検察が起訴して、裁判所に事件が係属して、実刑判決となれば被告人は刑務所に収監される、という一連の手続きがオンラインで一元管理。同じ情報を二度も三度も入力しなくていいし、入力間違いも起きないし、各機関での引き継ぎもスムーズ
    (ちなみに日本の刑事手続では、検察から裁判所への事件記録の引き継ぎは、検察官が「風呂敷」に包んで裁判所に持参して裁判官に手渡しします)
  • 簡略化、自動化だけでなく、透明化も重要。会社の情報(株主や役員構成、年次報告など)や、土地の情報(所有者や、抵当権の設定状況など)は、誰もが自由にオンラインで確認できる
    (日本では法務局に登記を取り寄せないといけない…)
  • それどころか、人の犯罪記録まで自由に確認できる!ベビーシッター呼ぶときに、窃盗とか性犯罪の前科があったら嫌でしょ?とのこと。一応、未成年の前科は確認できないし、罪の重さに応じて一定期間経過以降は確認できないとのことだけど…
  • ただ、いつ誰が何を見たかのログを本人は確認できるので(足跡機能みたいなもの)、不必要なアクセスはしにくい

というわけで、徹底した合理的思考に基づく未来世界には、さすがに驚きました。

このe-サービスの仕組みは他国にも輸出しているそうなので、日本でも導入できたらいいですね。

その中で印象的だった話は、別にソースを提供してライセンス料を支払ってもらうビジネスなのではなく、インテグレーション、コンサルテーションでフィーをもらうビジネスだということです。

こういう仕組みを導入する際は、法制度や運用を大幅に変える必要があり、その際のインテグレーション、コンサルテーションが重要であって、ソースそれ自体には別に価値はないとのことでした。

これって、AI時代にいかに付加価値のある仕事をするか、という話と通じるものがありますよね。

あらゆる公的サービスがオンラインで統合されています