JR貨物(日本貨物鉄道株式会社)が2019年2月13日に、Twitterに公式アカウントを開設しましたが、直後に投稿した「JR貨物公式Twitterアカウント利用規約」が(悪い意味で)大きな話題になりました。

話題の投稿が、これです。

(以下引用)

利用にあたっては、当社HPに掲載している「JR貨物公式Twitterアカウント利用規約」を確認いただき、同意のうえ利用していただきますようお願いします。PDFで表示されます。

https://www.jrfreight.co.jp/storage/upload/c50e69a4caca027e4698639eababbd9e.pdf

(引用終わり)

内容を読んでみると、JR貨物のTwitterアカウント運用ポリシーという感じで、そういうものを公表すること自体、別におかしな話ではありません。

ただ、投稿の内容と、「JR貨物公式Twitterアカウント利用規約」の内容には、それぞれ問題がありました(だからこそ、悪い意味で大きな話題になってしまったのです)。

まず、問題の投稿は、「利用規約」と題した文書に「同意のうえ利用していただきますようお願いします」と記載されています。

この点、ウェブサービスの提供を行うウェブサイトには、「利用規約」や「利用約款」といった、そのウェブサービスを利用する際の契約条件を記載した文書が掲載されていることが一般的です。

そして、これら利用規約が、サービス運営者と利用者との間の契約に組み入れられる(利用規約の記載内容が契約条件となる)ためには、利用者が利用規約の内容に同意することが必要です。

だからこそ、サービスを利用する際の申込画面やアカウント開設画面で、「利用規約の内容を確認の上、同意します。」という記載が設けられていることが一般的なのですね。

ですが、企業の公式Twitterアカウントで、利用規約へ同意の上で利用というのは、一体何なのでしょう。Twitterユーザーなら、Twitterの機能として、フォローして、自分のタイムラインに表示されてくる投稿を閲覧したり、RTやコメントしたりするだけですし、Twitterユーザーでなくても、投稿を閲覧するのは可能です。

Twitterという広く一般に公開されたプラットフォーム上で、アカウントを開設して投稿をしているユーザーがいるとして、その投稿を閲覧したりするのに、いったい何の契約が成立するのか、契約なんて別に成立しないのではないか、だから利用規約に同意する必要はないはずだし、同意したからといって何か契約が成立するわけでもないだろう、という素朴な疑問が湧く話です。

実際、JR貨物のTwitterアカウントは、この記事を執筆した2019年2月20日現在、鉄道博物館の展示物を案内する投稿くらいしかしていません。

また、JR貨物公式Twitterアカウント利用規約の内容も、Twitterがどういうものか理解しているのか疑問な規定が散見されます。

(以下引用)

3.ご注意いただきたい事項について

(11) 本アカウントをご利用される際には、以下のような行為はご遠慮ください。ユーザーの行為が以下の いずれかに該当する場合、利用者に事前の告知なくコメント等を非表示または削除することがあります。

(引用終わり)

この記載は、プラットフォーマーの利用規約でよく目にする規定です。

違法であったり、不適切な内容のコメントがなされた場合に、サービス運営者として、それを非表示や削除することができるという規定なのですが、例えばJR貨物公式Twitterの投稿に問題のある「クソリプ」がされたとして、それをJR貨物公式Twitter側で非表示にしたり削除することは、当然できません(それができるのは、Twitter社だけです。)。

というわけで、全般的に、ウェブサービスの利用規約というものや、Twitterの仕組みをあまり分かっていない人が手がけたのだろうな、という残念な気持ちになる一件でした。

皆さんが企業公式SNSアカウントを開設する際に、運用ポリシーを定めて公表することは結構ですが、タイトルはあくまでも「運用ポリシー」などにすること(「利用規約」にはしないこと)、そしてあくまでも自社がその内容に従って運用することを宣言するだけにしておくこと(閲覧者に同意を求めないこと)は、注意してください。