ここ数回、北欧の自治体や企業の先進的な取り組みを紹介してきましたが、いよいよ今回は最終回、僕が北欧で気づいたことのまとめをお伝えします。

皆さんのビジネスや、これからの日本社会に役立つ内容ですので、ぜひ読んでみて、シェアして下さい。

未来の社会、3つのキーワード

単純化

・グローバル化によって人種や社会階層が多様化する社会で、知的水準、教育水準、ITリテラシー、文化、言語に関係なく、誰でも悩まず間違えずに利用できるよう、単純な仕組み、手続き、UIにする

自動化

  • 少子高齢化で労働人口が減る中で、ITで自動化できる業務はITに任せてしまう
  • テクノロジーの急激な進化で、これまで人間でないとできないと思われていた業務もITができてしまう
  • 中途半端な機械みたいな仕事、セクシーでない仕事は無くなっていくので、付加価値のある、価値そのものを創り出せる仕事をしていかないといけない

透明化

  • 隠す(守る)のではなく、透明化することによって、不正や不信を起こさせない
  • エストニアの電子システムは、個人の犯罪記録を含めて、あらゆる情報に誰でもアクセスできる代わりに、いつ誰がアクセスしたか(公的機関からのアクセスも含めて)のログが表示される。おかしなアクセスは明らかになる
  • Great Place To Workの欧州中小企業部門で1位を2回獲得したフィンランドのIT企業「Futureice」は徹底したガラス張り経営。従業員全員の給与が分かる(給与・評価に関する相互不信が起きない)。入社初日に業務用のクレジットカードが会社から交付される(明細を全員が見れるから、不正のしようがない)

ITに置き換わる5つの仕事

繰り返しがある

  • スウェーデンでは多くのスーパーがセルフレジ(レジ打ちスタッフがいらない)プロセスが多い・進みが遅い
  • エストニアでは会社設立が実質10分、オンラインでの手続きで終わる

政府の規制がある・独占事業者がいる

・外国送金を普通の銀行の8〜10分の1の手数料で実現するエストニア発のサービス(Transfer Wise)がある(Skypeの初期メンバーが立ち上げた。P2Pの設計思想)

やりたくない

・肉体的にきつい農業がITで効率化されてきている

高価・金がかかる

・ゴールドマン・サックスがIT化で株式トレーダーを大幅削減したニュースがつい先日話題に(トレーダーは超高給取り)

環境が人を成長させる

・北欧は厳しい気候、乏しい資源、少ない人口という制約の中で、人的資源を最大限活用し、生産性を最大限向上させないといけない

・冬が長く、凄まじく寒く、日照時間も短いので、外出が困難。仕事も趣味も生活も屋内で完結せざるを得ない→エンタープライズSaaSや、メディアコンテンツが発達する。デザインが向上してインテリアが充実する

生産性を高めるために取り組むべきこと

  • 仕事の整理をして、止めていい仕事、IT化できる仕事、分業できる仕事、この3つを明確にする
  • そのための核となるIT人材を獲得する、育成する(ITリテラシーが必須スキル)
  • 人的資源を徹底的に活用する(その人が何ができて、どうレベルアップさせるか)
  • イノベーションを促進する(イノベーションは交流から生まれる。社内で交流が生まれやすい仕組みにする。社外の人、ビジネスと関係ない人とも積極的に交流)

北欧型の幸せは日本で実現できるのか?

・将来への安心感(教育・医療・福祉が無償)

←超高齢化社会の日本では無理そう…

・国民が決める、自分が選んだ道(高い投票率。税金は国へのデポジットであり、使途はチェック)

←低い投票率、お上にお任せの日本では無理そう…

・人間らしく生きることへの欲求(高齢者は子供と同居せずに自活する。寝たきりの人はいない。老人ホームで長居せずに亡くなる)

←介護が社会問題となり、議論が進みだしている今、今後は改善される?

・短い労働時間、長い余暇(法律で義務付けられている)

←日本型の差別的な雇用制度(同一労働同一賃金になっていない。流動性が低い)や生産性の低さが社会問題となり、議論が進みだしている今、今後は改善される?

以上まとめてみましたが、記事には書ききれなかったこと、おおっぴらに書けないことなど、いっぱいあります。
北欧の情報は多少なりともキャッチアップしているつもりでしたが、やはり百聞は一見にしかずで、直接人と会って話を聞くことが大事ですね。

映画にもなったフィンランドの「かもめ食堂」にて