IT先進国として最近よく耳にするエストニア。

人口約130万人の北欧の小国が、一体どんな取り組みをしているのか?

現地でNGOの方から聞いた話は衝撃的でした。

・エストニアでは生まれた瞬間に個人番号が発行されて、あらゆる場面で個人番号が利用され、利用履歴がオンラインで管理される

  • 15歳以上の国民は国民IDカードの携帯が義務。身分証明証、運転免許証、健康保険証の役割をこれ一枚で果たしてる。申請、届出、納税、登記などの公共サービス、手続きだけでなく、契約締結、銀行決済、処方箋の発行、はたまた駐車場の料金支払など民間サービ、手続きにまで、国民IDカードが利用される(厳格なチェックの下、民間のシステムが接続されている)
  • 利用の仕方も簡単。小さな読取機にカードを読み込ませて、2つのPINコードを入力すればOK。個人番号・カード現物・2つのPINコード、これがセットで必要
  • エストニアは1700種類のオンラインの行政サービスがあり、99%の行政サービスがオンラインで完結している
  • 99.8%の金融サービスがオンラインで完結している。話をしてくれたNGOの担当者は、過去9年間現金を持ち歩いたことはないとのこと
  • エストニアでは「すべての国民がネットに接続できること」が「社会的な権利」とされている。家庭でのブロードバンド普及率は90%以上。公共施設ではフリーWi-Fiが飛んでいる。
  • 医療情報をオンライン管理する「e-Health」によって、患者は医者に電話口で個人番号を伝えれば、医者がオンラインで病歴を確認しながら問診を行い、その個人番号に紐付けて処方箋を発行してくれる。患者は国民IDカードを薬局に持参すれば、処方された薬を購入できる。これで病院での待ち時間が3分の1になった
  • 2005年、世界に先駆けて導入されたネット選挙「i-Voting」によって、いつでもどこでも投票できるし、締め切り直前まで投票先を変更できる。海外にいる人は、これまでは大使館を通じて投票していたのが、ネットで投票できるようになった
  • 会社の設立もオンラインで完結。外国人がエストニアで会社を設立してビジネスをする場合も、わずか4〜5日でスタートできる!

まるで夢のような未来世界ですね。

なんでこんなにうまく行ったかというと、歴史的に大国の侵略を受け続けていて、現在はロシアの侵略が現実的な脅威となる中で、例え国土を奪われてもオンラインで国家が存続し続ける仕組みを作る差し迫った必要性があること、ソ連からの独立時に何もない国だったので、ゼロベースで仕組みを作ることができたこと、冬が長くて極寒で外出することすら困難なので、家やオフィスの中で手続きが完結するという利便性が高く評価されたこと、といった、歴史的、地政学的、気候的要因も大きかったようです。

ちなみに問題としては、リテラシーの低い高齢者などが十分に使いこなせないとのこと。例えば年金支給日には、高齢者が銀行窓口に大行列を作ったりして大変なそうです(ただでさえ窓口の数も少ないので)。

とはいえ、全世代がデジタルネイティブになる将来的には、こういう問題もなくなるのでしょうね。

 

e-Estonia showroom

「e-Estonia showroom」という、国の産業協力プロジェクトとして独立行政法人の支援を受けて設立されたNGO団体の運営するエストニアの最先端のIT産業を紹介する施設でお話を聞きました。