中国のシリコンバレーとも称される深セン。
HUAWEIやDJI、Tencentが本社を構えるこの都市は、ハードウェアのベンチャーが集まり、次々に起業してスケールしていくエコシステムができあがっていました。
その深センのエコシステムを担っているのが、深センに数多くある「メイカーズスペース」です。あまり聞き慣れないこの「メイカーズスペース」、実は深センならではの施設でした。
今回は、深センの中でも規模の大きいメイカースペースである「華強北国際創客中心」を訪問し、エコシステムの中でどんな役割を果たしているのか聞いてきました。
そもそも、メイカーズスペースがどんな施設かというと、ざっくりいえばハードウェアベンチャー向けのコワーキングスペースです。日本でいうと、「DMM.make AKIBA」がまさにそれでしょう。
複数のハードウェアベンチャーが集まり、オフィスとして仕事をするだけでなく、ラボとして試作品の開発などが行われ、様々なイベントや勉強会や交流会が開かれ、施設利用者同士でも交流をする、そんな場です。
このメイカーズスペース、深センの中でも、特に華強北電気街の周囲には相当な数あるようです。
というのは、前の記事でも紹介しましたが、華強北電気街は世界最大の電気街であり、どんな電子部品でもすぐ手に入ります。また、ソフトウェア・ハードウェアの大企業が数多く深センに本社やオフィスを構えているため、彼らと交流したり、投資を受けられる機会も多いわけです。
ハードウェアベンチャーがスケールするまでの流れは、概ね以下のような感じです。
アイディア→デザイン→部品調達→ソフトウェア設計→試作品の開発→小ロットでの開発→マーケティング&資金調達→大量生産→物流→資金調達
深センの特徴は、このサイクルがとにかく早いことです。
そして、メイカーズスペースの中でも規模の大きい(デベロッパーが運営している)この華強北国際創客中心は、上記の一連の流れにおいて様々なサポートを、数多くのパートナー企業と協力しながら提供し、高速サイクルを実現しているそうです。
パートナー企業は、物流、メディア、投資家、デザイン、HR、空間運営、etc、それぞれの分野でそれを本業とするサプライヤーです。
彼らは入居企業を育成する各種プログラムを提供したり、サプライチェーンのサポートも提供しているそうです。
華強北国際創客中心の入り口には、入居企業とパートナー企業の一覧が表示されています。パートナー企業を見ると、TencentやAlibabaのような中国企業だけでなく、Amazonやebayなどの欧米企業まで。
例えば、Amazonと連携したeコマースのスペシャリストを育成するプログラム(物づくりではなく、オンラインでの販売の仕方を学ぶ)、なんてのもあるそうです。
また、華強北国際創客は色々な投資家とのネットワークあるから、プロジェクトの規模やジャンルに応じてマッチングもしているそうです。華強北国際創客中心で第1ラウンドの資金調達をして、第2ラウンドの資金調達まで進んだのは30%もの割合になるそうです。
華強北国際創客の施設内には、入居企業が開発した(試作を終え、既に大量生産に入ってる)プロダクトも展示されていました。
色々ありましたが、子供用の温度計とかが成功例だそうです。入居企業の手掛けるプロダクトはガジェットが多いけれど、最近はサポートロボットなんての増えているそうです。
全体のレイアウトは、共有スペースもありますが、個室がメインでした。ハードウェアベンチャーなので、機材や資材を置いておく必要があり、オープンスペースでフリーアドレスな感じではないのでしょうね。
深センは、かつては下請企業の街でしたが、今や事業創造の街に大きく変わって来ているのだなと思いました。
下請けのような「依存型」だと、発注者がコケたらお終いなので、いかに自社のプロダクトを作り、自社をブランド化していくかが大事ですよね。
技術がなくてもアイディアがあれば形にできる、アイディア一つで若者が起業する活気ある街に、大きく刺激を受けました。