ミャンマーでライターやコネクターの仕事をしている桂川融己さんと、主に在ミャンマーの日系企業の支援をされている弁護士の森谷美雄先生さんから、ミャンマーでのビジネスについていろいろお聞きしました。

東南アジア諸国の在留邦人数でいうと、1位のタイが7万人以上いるのに対して、ミャンマーは2600人程度。長らく軍事政権が続き、民主政権がようやく2016年に発足したため、まだまだ世界に向けて情報発信がされておらず、日本人には馴染みの薄い国ですが、そこでのビジネスはかなり予想外なものでした。

びっくりしたのが、ミャンマーではUnicode(コンピューター用の文字コードの世界標準規格)が全然普及しておらず、Zawgyiとかいう(Unicodeと互換性のない)謎規格が広く普及していることです。

それの何が問題かというと、ミャンマーの人がZawgyi規格のビルマ語でネット検索をしようとしても、検索エンジンが全く機能しないのです。逆に海外の人が、Zawgyiがインストールされていない(普通そうですが)パソコンやスマホでビルマ語のサイトを見ようにも、文字化けしてしまいます。

ただ、FacebookはZawgyiに対応しています。そのため、ミャンマーの人にとって、ウェブサイト=Facebookページ、検索エンジン=Facebookの検索機能、というかインターネット=Facebookだそうです。だから、ミャンマーでのウェブ制作会社とかウェブマーケ会社は、やっていることといえば、Facebookページの制作・運用・Facebook広告の代行、という感じだそうです。

ただ、Facebookの検索機能はご存知の通り使いにくいです。そのため、インフルエンサーマーケティングが非常に盛り上がっているそうです。大勢の人たちがインフルエンサーのFacebookやFacebookページをフォローしているわけですね。

もはや、テレビに出ている芸能人よりも、インフルエンサーの方がプロモーションのギャラが高い事例もあるそうです。

また、フォロワー数が多いFacebookページには大きな価値があるため、桂川さんが聞いた事例では、とあるFacebookページが日本円で2500万円で売りに出されたケースもあるそうです。

また、森谷先生からは、ミャンマーでの法制度や弁護士活動についてお聞きしましたが、信じられないくらい法制度が遅れているというか、そもそも法律が全然ないそうです。

例えば、知的財産法でいえば、著作権法以外の知的財産法(特許法とか商標法とか)が存在せず、唯一存在する著作権法も、英国領インドの一部であった100年以上前に作られたもので、到底使い物にならない内容だそうです。

法律がない以上、あらゆる物事が(それこそ役所の手続きですら)交渉ベース、人脈ベースで進むため、非常に苦労することも多く、しかもミャンマーの首都は現在ヤンゴンではなく、ネピドーという謎の場所にあって(2006年に、何もなかった平原に、政治や行政の機関を置くために突貫で作られた人工都市。なぜそんなとこに作ったのかは諸説あって、一説には占い師のお告げだとか)、そのため役所の手続きでネピドーに何度も出張しなければいけないこともあるなど、日本の働き方改革とは全く違う世界がそこに広がっていました。

法律がない代わりに、問題解決に警察が果たす役割がやたらと大きく、私人間の金の貸し借りなどのトラブルでも警察に相談すると、「悪いやつだ」ということで警察が普通に対応してくれるそうです(民事超介入!)。一番すごい例では、「嘘をついた」という理由で警察がその人を逮捕したケースもあるそうな。

効率よく仕事をしたい人間にはハードコアな世界ではある一方で、何もないところで、自分でビジネスを作り出して切り開いていく楽しさを非常に感じるお話でした。

ちなみに、桂川さんは2014年にミャンマーに来られてからずっとブログでミャンマー情報を発信されていて、ミャンマーでビジネスや生活をする上で役立つ情報が満載なので、ミャンマーに興味がある方はぜひご覧ください。

(桂川さんのブログ)