Alibabaが2015年に1.5億ドルを出資し創業した生鮮食品スーパーのフーマーに行ってきました。

お客の数よりも多い店員が、モバイル端末を片手に売り場を練り歩き

注文された商品をピックアップ。

店内には何箇所かベルトコンベアーの設置台があります。

店内には何箇所かベルトコンベアーの設置台があります。

ベルトコンベアーで運ばれていき

店の奥へと向かっていきます。

バックヤードに運ばれて梱包され、バイク便で配送されていきます。

店舗の規模の割には小さいレジコーナー。有人レジは右奥に2つだけしかありません。

左にあるのは顔認証決済のカウンター(顔とAlipayアカウントが紐付けられています。ちなみに、上海市内のオフィスやホテルにも顔認証端末があって、本人確認がスムーズに行われていました。)。ゆるキャラなカバはフーマーのマスコットキャラクター。

 

フーマーはAlibabaの実験店舗的な位置づけで(ここでもAlibaba!)、色々と先進的な仕組みが盛り込まれているのですが、その中でも特に面白いのが、「ネット注文を受けての宅配」が売上の一つの柱だということです。

フーマーの店内で驚くのが、お客の数よりも店員が多くいて、彼らがモバイル端末を片手に売り場を練り歩き、商品をピックアップして保冷バッグに詰め込んでいるのです。そして彼らは、吊り上げ式ベルトコンベアーの台にその保冷バックを持っていって設置すると、冷凍バックはベルトコンベアーで運ばれてバックヤードで梱包され、バイク便でお客のもとに配送されていきます(運送業者は外注です。Mobikeの時給150円自転車回収員のように、低賃金で働いているのでしょうか…)。

その配送時間たるや、店舗から半径3キロ圏内の場所なら、注文からわずか30分以内に到着するということです。Amazonの即時配送サービス「Amazon Now」もびっくりのスピード感ですね。

30分以内の配送のため、お客も基本的に在宅しているので、不在率も低いそうです(というか、下手に不在で受け取らないと、Alibabaも信用スコアが低下して利用できなくなりそうですね。)。

そう考えると、フーマーの店舗はある意味ショールームであって、お客はそれを見るだけで(というか見に行く必要もなく)、購入はネット注文で済ませて、家で受け取るのが当たり前なのですね。

僕が行ってみた上海店も、お店はある程度の大きさがありましたが、レジは少なかったです。というか、有人レジは2つしかなく、あとは自動レジでした。

しかもこのレジ、顔認証システムも導入していて、もはやスマホを取り出してQRコードで支払う必要もなく決済ができてしまいます。

それと、Alibabaグループが運営するだけあって、支払手段は基本的にAlipayです。

実質、Alipay会員専用の店なわけです(まぁ、中国でスマホを持っていてAlipayを使わない人はいないですが)。

そうなると、先程の配送の件もそうですが、お店に対して下手なこと(不当なクレームとか万引きとか)ができませんよね。信用スコアが低下して、生活に重大な支障が出ます(今や、あらゆる生活サービスにAlibabaが関わってくるので)。

また、お客の全ての購買データをAlibabaが収集できるので(Alipayで決済されるので)、そのビッグデータを活用した売れ筋商品の仕入れや、廃棄ロスのない在庫管理をしたり、パーソナライズしたダイレクトマーケティングや、位置情報を利用したマーケティングも可能ですね。

出店場所を決めるときも、所得が高くてAlipayでの買い物頻度の高い人が住んでいるエリアを選ぶとかもできそうです。

AlibabaがAmazonに商流、物流、金融では先を行っている、と言われるのがよく分かります。

もちろん、フーマーはまだ実験店舗であって、上海レベルの都市でもこれが一般的というわけではまだありませんが、まだ19世紀のような暮らしをしている地方と、世界最先端の未来の暮らしをしている都市部(の一部)、それが渾然一体となった中国のダイナミズムには驚かされます。

これからますます拡大する中国にビジネスで関わってみたいですね。