Alibabaの方から、Alibaba企業文化と、Alibabaが最近特に力を入れている金融サービスについてお聞きしました。
今や中国では、全てのお金の道はAlibabaに通じているといえるでしょう。
・「難しいビジネスを簡単にできるようにする」(できない商売を無くす)がグループミッション
・「102年生きる企業」を目指している。大量の市場データをもっている。すべてのユーザーに無料で市場データを提供し、彼らのビジネスの拡大をサポートする。「開けゴマ」と叫べば富がどんどん広がる。そういうイメージ
・起業直後に中国国内のネットバブルで倒産危機。ソフトバンクの孫正義を始めとして、色々なパートナーからサポートを受けて危機を乗り越え、黒字化した
・しかしその後、中国国内でSARSが大流行した。広州で2名だけSARS患者が発生したが、そのうち1名がAlibaba社員。政府より全社員の隔離&1週間の外出禁止措置。
・今やAlibabaは中国の公共インフラシステムの一部。公共料金の支払もAlipayで出来る
・Alibaba従業員に対する業績評価→ボーナス/昇進/昇給/ストックオプション
・従業員は1年に13回給料をもらい、年1回ボーナスがあり、「Alibaba特別お年玉」もある
・Alibabaの価値観=「六脈の神剣」
1.お客様第一主義(お客様は神様で衣食をいただく親のような存在)
2.チームワーク(普通の人に普通の仕事を)
3.変化に応じる(イノベーションを歓迎)
4.誠実(正直であれ)
5.パッション(情熱的に楽観的に取り組め)
6.仕事熱心(専門性、執着、向上心)
・単なる業績への寄与だけでなく、六脈の神剣をいかに体現したかが、人事評価の制度に組み込まれている
・業績も悪く価値観も合わない=「小白兎」。業績は良いが価値観が合わない=「野良犬」。このタイプはご退場願う
・業績も良く価値観も合う=「明星」(スター)
・全般的に普通=「牛」
・2割が明星、7割が牛、2割が小白兎か野良犬
・Alibabaの6つのセグメント、電子商取引/金融/物流/クラウド/広告/国際貿易
・Alipayは海外展開している。色々な海外業者と提携しているので、海外でも様々なシチュエーションで決済可能(留学費の支払いとかも)。国際送金可能。海外で交通系決済にも使える。
・北米での展開は大変。米中の貿易摩擦が起きているから。昨年も、アメリカの送金会社を買収しようとしていて、手付金も支払っていたが、アメリカ政府からストップがかけられた
・インターネット+金融の形態。例えば小銭をAlibabaに預けてそこに利息がつくサービス。「余額宝」。現在はユーザー、預け金額が大きいサービスになっている。当初はここまで成長するとは思わず。
・伝統的な金融機関からは反発。「違法だ」と指摘された。社内で「危ないから止めませんか?」と声が上がった。ジャック・マーは言った。「責任は自分が負う。牢獄は自分が入る。君たちは自分の仕事をするのだ」。最終的に政府と交渉して、政府が直々に合法だと許可してくれた
・自分たちだけで(法的に)できないビジネスは、合法だけと業績が悪い会社を探して買収し、その会社を通じてビジネスを実現
・Alibabaにデポジットされた莫大な金を何に使っているか? 融資している。「Alibabaローン」。累計の融資額は2000億元。
・一般的な金融機関とAlibabaローンの融資の違い
利益率:15%以上/6.7%(利益率は高くない=その分ユーザーに還元)
融資額:平均150万元/平均6〜7万元(小口の貸付)
コスト:2000元/2.3元(圧倒的低コスト)
承認までの時間:早くて3日/数分(圧倒的スピード)
不良債権率:2〜3%/1%(不良債権率が低い)
・中国の金融機関は市場化されていない。利息を政府が決めている。最高と最低の率を。起業への融資の場合はいくら。みたいな。だから、余額宝の利率と「差額」が生まれて、ユーザーが利用するメリットが生じる
・アメリカの金融機関は自由市場。利息も自由設定。差額が生まれないから、こういうサービスは流行らない
・銀行と組んでローンのサービスをやろうとしたが、銀行の融資審査が厳しくて、申し込みがあってもなかなか融資が下りない。使い勝手が悪い。だったら自社で小額融資会社を作ろう。2010年に会社を設立し、自社でサービスを提供
・P2Pプラットフォーム。アメリカは2大サービスがあるが(LendingとProsper)、中国では乱立な成長期。参入ハードルがなくて、業界基準がなくて、監督もされていない(近々管理制作が出るが)
・ブロックチェーンテクノロジー。分散型台帳技術。中国ではビットコインが禁止になった。しかし、中国政府がブロックチェーン技術そのものを推奨することを、関係者は期待している。様々なサービスに技術を応用できる。
・Alibabaの金融サービスの歴史。とにかくスピードが速い。すぐに実行する
2003年10月18日:初の担保取引が開始
2004年12月8日:Alipay社が設立し、同月29日にAlipayアカウント体制が登場
2005年5月5日:Alibaba以外の会社が決済に使用可能
2008年10月25日:公共事業の支払機能を提供
2009年5月:モバイルアプリが誕生
2010年6月8日:融資会社を設立
2011年7月;QRコードでの支払い機能実装
2013年6月13日:利息サービスをスタート
2015年1月8日:ゴマ信用の会社が設立
2015年4月:お金を貸すサービスをスタート
2015年6月25日:銀行業をスタート
2015年9月:保険事業部が設立
・中国のネット保険は4種類ある。
保険会社が自ら作ったオンラインプラットフォーム/ECプラットフォーム/プロフェッショナルの第三者保険仲介プラットフォーム/専門のインターネット保険会社
・中国国内初のインターネット保険会社。Alibabaやテンセントなど、中国の大手IT企業が手を組んで設立した
・ゴマ信用の得点システム。5つの角度から分析
身分特質(社会的ステータスや高級品の消費など)
履約能力(支払い履行能力)
信用歴史(クレジット履歴)
人脈関係(交友関係の社会信用スコア)
行為偏好(消費行動の偏り)
・無担保で借り入れができる。キャッシュをおろせる。保証金が免除。
・ゴマ信用を活用した事例。自動車販売店。マネージャーとスタッフの2名だけいればいい。ユーザーはスキャンで入店(スコアが高ければ入れる)。車を選ぶ。融資サービスを利用する(スコアが高ければ利用できる)。その場で乗車して帰宅、
・これらのデータはネットでアプリを使ったり位置情報を使って、行動を画像化して分析し、ポイント化する。予測もする
・中国政府のルールとして、Alipayを利用するためには個人認証が必要、とされている。中国人ならIDで個人認証が可能。しかし外国人(中国に銀行口座を持っていない人)は個人認証ができない
・だから現状は外国人(中国に銀行口座を持っていない人)は残念ながらAlipayを利用させられない。ただ、外国の政府が自国のIDのデータベースなどを連携してくれれば個人認証が可能になるので、Alipayを利用させることができる。
・シンガポール政府はこれを許可している。他には、その国の支払決済会社を買収して、そのデータベースと連携する方法もある。インドの支払決済会社は買収して、インドでは使えるようになっている
全ての商売は「人・物・金」が要素となりますが、アリババはこれを全て押さえているのですね。
時価総額世界最高額の企業がアリババになる日も、そう遠くないかもしれません。