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深センを「中国のシリコンバレー」にした10大思想

急成長都市深センの”観”方について、株式会社エクサイジングジャパンのCEOの川ノ上和文さんに伺いました。

「深セン10大思想」の話は、あらゆるビジネスでイノベーションが必要とされる現代において、全世界で通用する普遍的な思想でした。

川ノ上さんのプロフィール

・深センでイベント企画や運営の仕事をしている

・起業家トーク・セッションしたり、ドローンのイベントをプロデュースしたり

・深センの南山区と渋谷区がコラボした国際的ピッチ大会をお手伝いしたり

・キーパーソン・業界団体・産業連盟を開拓したり、商談を設定したりして、事業開発をしたり

・中国スタートアップの資金調達状況、起業家やプロデューサーの戦略に関して情報発信したり

・大阪工業大学梅田キャンパスの都市型オープンイノベーション拠点「Xport」にもパートナーとして手伝ったり

なぜ深センは面白いのか

・まず前提として深センは例外。中国の中でも超特殊。これだけ見て中国を語るのは早計

・深センに関わってから1年。その間にいろんな事が起きている

・最近は深セン市としてデザインに関しても力を入れている。チームラボを招聘してイベントやったり都市開発のコンセプトメイキングにも入ってもらったり

・深センは広東省を軸とするGreater Bay Areaの要。中国の他の1級都市の上海、北京、広州と比べて若くて勢いがある

・一帯一路戦略の中で、世界各地に点在する約4000万人の華僑経済を繋げることは重要。そこでGBAが果たす役割は大きい

・とはいえ、中国の経済誌では「次の深センはどこだ」とよく言われる。例えばビッグデータ産業で盛り上がる貴州

・深セン市の人口は公式発表では約1400万人。しかし流動性のある人口を踏まえると2000万人。今後10年で3000万人になると言われている

・香港・マカオを繋げる橋は完成していて、年内には運用開始。これが運用されれば、GBAの物流連携は更に強まる

・深センはまだまだ山だらけ。都市化されたのは一部。とはいえ絶賛拡張中

・深センには「10大思想(スローガン)」がある

深セン10大思想その1

・ タイムイズマネー、効率は命

・「深セン速度」という言葉もある

・鉄道網が、2008年は2本だけ、2017年は8本。2035年は20本の予定。インフラ整備のスピードが半端ない

・香港と深センを結ぶ高速鉄道開通でさらに便利に(おそらく工事は終わっていて、運用開始まち)

・1983年の華強北は赤土が広がる何もない場所。今は世界最大の電気街

・南山区がハイテク企業が集結しているエリア。Tencentの本社もある

・深セン湾創業広場というエリアに、BAT(バイドゥ、Alibaba、Tencent)が並んでいて、その真中に、深セン市が運営するベンチャーキャピタルの巨大施設があるし、近くにはスタートアップカフェもいくつもある

・ハイテクエイアが拡張中。金融エリアも作る予定

深セン10大思想その2

・ ”大衆創業、万衆創新”=皆が創業しよう、皆がイノベーションを起こしていこう

・「試行錯誤」 イノベーションを奨励し、失敗に寛容に

・最初は放置プレイ。多少のトラブルは気にせず好きにやらせて、まずは大きくなってもらう

シェアサイクルも最初は道路に自転車が捨てられまくってメチャクチャだったけど、とりあえず皆はじめて、最終的には大手二社に集約

・こういった思想から、新しいサービスが続々と生まれる

若い力が牽引する深セン

・ユニコーン企業(未上場時価総額10億ドル)は中国59社、アメリカ109社

・深センを代表する企業

HUAWEI(スマホ)

ZTE(スマホ)

SF(物流)

BYD(電気自動車)

Tencent(IT)

BGI(ゲノム解析)

DJI(ドローン)

Makeblock(教育)

Insta360(360度カメラ)

・重要開発地域だけでなく、産業基地計画もある(新エネルギー、EV、ゲノム等)。産業ごとにコアとなるエリアを作ろうとしている。深センの10行政区で焦点を当てる産業が違ったり

・深セン市内でも区ごとに経済力競争がある・一番有名な南山区が成長率が一番高い

・教育領域の深セン企業も増えている。高まるSTEM教育(システム・テクノロジー・エレクトロニクス・マスマティス)

・ゲノム教育センターやブレイントレーニングセンターなんてまである。まさに教育ブーム

・深センはグリーンシティ。環境が良い。市民サービスという意味もあるが、30代の優秀な人材を集めるための環境づくり

・まだまだ初等教育は弱いが、アッパーミドルを対象とした初等教育のニーズはあると思う

・「学歴」ではなく「素質教育」に投資する親が増えている。例えば北京だと学閥が強いので、名門大学に入れるという方向での教育だが、深センもそういう志向はもちろんあるが、深センで育った若い親は、変化の早い時代は学歴だけではダメなのではと考え、STEM教育とかに投資する親が増えている

・「知識を教える」のではなく、「フレームワーク」を教える。変化の早い時代は知識がすぐに陳腐化する

深セン10大思想その3

・ ”来了 就是深セン人” =来たら、あなたは深セン人

・「多様性」のある移民都市

・広東省(広東語を使うエリア)なのに標準語が一番通じる。実は広東省の人間が少ない

・海外留学経験組が非常に多い。そういうエリート層が集まるエコシステムができている

「帰」と「海亀」の中国語発音が同じなので、「海亀組」と呼ばれている

・深センに大学は一つしかない。深セン大学。卒業生の76%が深セン市内で就職・この7年で中国大学ランキングの中で上がってきている。「学閥」ではなく産業界の評価としてランキングを上げていきたい

・産官学連携プロジェクトがある。市場が求める人材を育成するという観点から教育が行われている

・学校以外のコミュニティでいうと、企業コミュニティもある。Tencent系、Alibaba系、Baidu系、Huawei系のコミュニティ。各企業を辞めて起業した企業や、Tencentが出資する企業のコミュニティ。日本でいうとリクルート的なエコシステムがいくつもある

・深センは最新トレンドに触れる、創業パートナーを探すことのできるエリア

・中国ではドローンは「航空宇宙産業」と考えられている。航空系のエンジニアリングを学ぶ人材がドローン業界に流れている

深セン10大思想その4

・”深セン、与世界没有距離” =深セン、世界との距離はない

・「グローバル思考」別に中国No.1を目指しているのではない。世界No.1を目指している

深センを読み解く方程式

「IT・新興産業」×「現地環境」×(想像力・論理的+創造力・非論理的)

・「IT・新興産業」

中国IT起業家の思考とビジョン(AlibabaとTencent、どちらに買収されるかで今後の展開が変わってくる)

現時点でのボトルネック(ドローンや電気自動車でいうとバッテリー)

実体験(まずは使ってみないと)

・「現地環境」

都市計画

産官学連携

ライフスタイル(モノ消費からコト消費)

世代別の考え方(世代違うと価値基準がぜんぜん違う)

・「(想像力・論理的+創造力・非論理的)」

前者は日本が得意だけど、後者はどうだろう。中国は後者。ビジョナリー

未来への期待感や好奇心に突き動かされる

つなぎ合わせる力

もし日本企業と深センの企業がコラボするなら

・例えば、日本シルバー産業と深センウェアラブル産業を組み合わせるとか。スマート杖(転んだらレスキューの信号が発信される)とか

物づくりで日本は深センに負けたのか?

・多様性とスピードでは負けているだろう。ただ、高品質が求められるハイエンド製品では、まだまだ日本がリードしている

 

深センがハードウェアのシリコンバレーになった今、日本のハードウェアベンチャーがどう戦っていくのか、いろいろと考えさせられる話でした。

現状ではまだハイエンド製品では日本がリードしているというお話がありましたが、世界ドローンシェアNo.1のDJIの品質を見れば、深セン発のハードウェアベンチャーが日本製品に匹敵・むしろ上回る品質の製品を次々と生み出す未来は、決して遠くないかもしれません。

しかし日本のマーケットでは、リリース時点から高品質、完成度が求められます。そうなると、深セン的に、高速で製造して販売まで持っていき、マーケットの反応を見ながら改善を繰り返していく、というやり方ができません(一気に製品・会社のネガティブなレビューがネット上に出回ってしまい、挽回がしにくいので)

そうなると、始めから日本マーケットに限定することなく、グローバルマーケットでの展開を前提にした製品作り、販売戦略が求められてくるかもしれませんね。

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