医療デジタルシミュレーションのVRソフトを開発するラトビアのヘルスケアスタートアップ「AnatomyNext」のCPOのUlbisさんに、実際にVRヘッドセットを使って解剖体験をやらせてもらいました。PSVRでゲームはやったことはありますが、まさか解剖までできる日が来るとは。
・医学部生は解剖研修が必須。しかし解剖のためには検体が必要。必要なときにあるわけではないし、コスト面の問題もある
・そこで、精巧な人体3Dモデルを利用したVRで解剖体験ができればよいのでは、と考えて開発した
・現在は頭部の3Dモデルだけ。頭部の開発がうまく行けば、首から下も開発する
・CEOは元々は彫刻家志望の学生だった。精巧な彫刻を作るために人体構造の理解が不可欠だと感じていたが、大学にある書籍を読み漁っても「絵を描く人」向けの内容ばかりで、人体構造の理解の役には立たなかった
・仕方ないので自分で解剖学を勉強してそれをスケッチにしたり写真資料をまとめている内に、その内容が仲間内で評判となった
・さらに、WebサイトやFacebookページも開設して情報発信をしたところ、大きな反響があった
・ついには、「Anatomy For Sculptors」(彫刻家のための解剖学)という本を出版した。英語、ドイツ語、日本語、中国語等、多言語で出版された
・そして、ここで得た人体構造、解剖学に関する知見を元に、医療デジタルシミュレーションのVRソフトを開発することになった
・精巧な人体3Dモデルを開発できるだけの知見があることが競合優位性
・VRヘッドセットとモーションコントローラーは、Microsoftが発売している市販のものを使う
・顧客は病院、大学、軍を想定
・現在、ワシントン大学のデンタルメディカルスクールで学生の研修に利用してもらい、フィードバックを受けている
・全世界での医学部生の解剖研修のデファクトスタンダードを目指している
ここでもやはり、「ニッチを攻める」「専用機は開発せず市販品で低コストで使える」「始めからグローバル展開」といったラトビアのスタートアップの特徴が発揮されていました。
これが日本ですと、そもそも日本国内の解剖研修マーケットが小さい(と思う)ので、全然ペイしなさそうで手を出す人はいなさそうですが、始めからグローバル展開、全世界のデファクトスタンダードを狙っているから、果敢にチャレンジできるのでしょうね。