電気自動車というと、日本では高級車なイメージがあります。
ですが中国には、「低所得者層向け電気自動車メーカー」と揶揄されることもある電気自動車メーカーがあるのです。
そのメーカーというのは、深センにある「BYD」です。
日本では知名度の低いBYDですが、地球規模の課題となっている中国の環境問題を改善することを目指している会社でした。
・BYDの創業は1995年。携帯電話用のバッテリーメーカーとしてスタートした
・2000年台初頭にNokiaやmotorolaから大量にバッテリーを受注して急成長した
・2003年に自動車会社を買収し、2005年にまずはガソリン車の販売を開始し、2008年に電気自動車の販売を開始した
・2017年の売上高は約1060億元=(約1兆8200億円)。従業員数は22万人。
・タクシー用電気自動車「e6」は深セン市内のタクシーの50%が採用。2019年までに100%の採用を目指している
・電気自動バス「K9」は深センの市営バス全台に採用。日本でも京都に7台、沖縄に10台のK9が運用されている
・深センでは市民の人口増加・所得増加に伴い、車が増えすぎて、環境問題・渋滞問題が生じたため、増加を抑制するためにナンバープレートの取得価格が高額になっている(新車一台買えるくらい!)
・しかし、電気自動車のナンバープレートなら無料で取得できる(電気自動車の普及のため)
・しかもBYDの電気自動車は200万円台から購入可能。その上、中国政府の新エネルギー車の購入補助金もある
・つまり、BYDの電気自動車の購入(+ナンバープレートの取得)は、非常に安く済む。だから「低所得者層向けの電気自動車」なんて揶揄されることもある
・お金のある人は、ブランドを重視するなら欧米ブランドカーを買うか、環境を重視するならテスラを買う。BYDの電気自動車は、値段は安いがデザインは微妙なので、「BYDの電気自動車を買うくらいなら自転車を買ったほうがマシだ」なんて言う人もいる
・BYDも流石にデザインに関しては改善せねばと思って、Audiのデザイナーを引き抜いたりもしているが、まだまだBYDの自動車メーカーとしてのブランドは中国国内では低い
・しかし、BYDは別に高級自動車メーカーを目指しているわけではない。自動車メーカーとしてのブランドの低さはさほど問題視していない
・BYDの手掛ける事業は主に5つ。バッテリー・電気自動車・モノレール・エネルギー・エレクトロニクス
・中国の課題は環境汚染と交通渋滞。その解決が国策である。BYDは自社のビジネスを通じてそれを解決できると考えている
・電気自動車とモノレールによって、排ガスをなくし、交通渋滞を無くす。エネルギー事業によって、火力発電等による環境破壊も防げる
・大気汚染の原因の6割が自動車の排ガス。これを電気自動車に置き換え、モノレールも発達すれば、劇的に環境が改善
・クリーンソリューションを提供する企業と自身を位置づけている。別に電気自動車メーカーだとは考えていない。クリーンな都市づくりも支援
・電気自動車についても、自家用車だけでなく、タクシー・バスのような商用車、物流用車両・建設用車両・ごみ処理用車両のような特殊車両も手がけている。したがって消費者に対する高級車メーカー的なイメージは必ずしも必要でない
・低所得者層向け電気自動車と揶揄されようが、多くの人がBYDの電気自動車を買えば、結果として環境問題は改善される
日本の大手自動車メーカーは、あくまでも自動車事業からスタートしましたが、バッテリー事業からスタートしたBYDは、そもそも自動車事業に対する位置づけが根本的に違うのですね。
自動車メーカーのバッテリー事業というと、テスラが最近、家庭用バッテリー事業をスタートして話題になりましたが、BYDとどう戦っていくのか、注目していきたいところです。
それにしても、中国が将来、電気自動車の最普及国となって、環境問題が大きく改善されたら素晴らしいことですね。