ベラルーシとバルト三国(ラトビア、リトアニア、エストニア)に強い、ベラルーシにある企業法務系法律事務所「Sorainen」を訪問して、シニア・アソシエイトのKirillさんからベラルーシのビジネス環境について色々と聞いてきました。
IT立国として最近有名なエストニアは、e-Residencyを使えば海外の人でもオンラインで簡単にエストニア国内で会社を作れますが、ベラルーシはそのあたりが出遅れていて、紙の書類の記入が必要だったりと、なんやかんやで手続きが大変なようです。
とはいえ最近は、グローバル企業がベラルーシ国内に会社を作ったり、ベラルーシの企業を買収したりするケースが増えているようです(Sorainenもそういったインバウンドの案件がメインだそうです)。
というのは、ベラルーシは国策としてエンジニアの育成や就労に力を入れていて、大学もIT系の学科が多く、IT企業に有利な税制も色々あるので、数多くの優秀なエンジニアを安く雇えるそうです。
その背景として、旧ソ連圏で今もロシアに近いベラルーシは、EUにも加盟していないのでシェンゲン協定の恩恵も受けれず(EU加盟国内なら他県で働く感覚で英国や独国で働けますが、EU加盟国でない国の人が働くためにはビザの要件が厳しい!)、小国なので資源もなく、確たる産業もなく、国として「弱い」のですね。
そんな国が生き残るとしたら、(資源もインフラ整備も不要な)知的産業である「金融」か「IT」に力を入れるしかなく(例えば小国ルクセンブルグは金融に力を入れて一気に発展しました)、バルト三国やベラルーシはITに力を入れているのですね。
ベラルーシの人としても、ビザの関係で他国で働くのが難しい中で、ITなら国内で働けますし(海外からオフショア開発の案件を受託するとか、IT系のグローバル企業の現地法人で働くとか)、ローカル企業で働くよりも、断然給与は高いです。
税制の中で驚いたのが、エンジニアの給与の場合は、所得税が一律月額で(ちょっと正確でないかもしれませんが確か)400ユーロだということです。
エンジニアとしても、給与も高いが物価も税金も高いフィンランドで月額給与が5,000ユーロでも、半分税金で持ってかれて手取り2,500ユーロで暮らすのと、ベラルーシで月額給与が3,000ユーロで、税金で400ユーロしかもってかれずに手取り2,600ユーロで暮らすのとでは(しかも物価が安い)、ベラルーシの方が断然いいですよね。
その上、給与をユーロでもらえば(グローバル企業はユーロ払いが多いそうです)、通貨(ベラルーシ・ルーブル)が下落するとむしろ儲かります(ベラルーシ・ルーブルはロシア・ルーブルに引っ張られるので、しょっちゅう暴落するそうです。)。
現代のグローバル社会では、知的産業(特にIT)に関わるかどうかで、同じ国で働いていても見える世界が違うのでしょうね。