皆さんも、twitter上での従業員の問題投稿による炎上事件は、よく知っていると思います。私も、ざっと調べてみましたが、ここ数ヶ月だけでも(注:本記事執筆当時は2013年)、これだけあるのですね。

  • 7月15日
    コンビニ店員、アイスケースで寝そべった画像をFacebookに投稿して炎上
  • 7月20日
    コンビニ店員、来店したサッカー選手が映った防犯カメラの画像をtwitterに投稿して炎上
  • 8月2日
    ハンバーガーショップ店員、大量のバンズに寝そべる写真をtwitterに投稿して炎上
  • 8月5日
    弁当屋店員、冷蔵庫の中で寝る写真をtwitterに投稿して炎上
  • 8月5日
    ラーメン屋店員、調理前の冷凍ソーセージをくわえてtwitterに投稿して炎上
  • 8月6日
    ステーキハウス店員、冷凍庫に入って遊んでる写真をtwitterに投稿して炎上
  • 8月10日
    蕎麦屋店員、厨房の洗浄機に入った写真をtwitterに投稿して炎上
  • 8月13日
    食品販売店店員、店舗から商品を常習的に盗んでいることをtwitterに投稿して炎上
  • 8月19日
    ピザショップ店員、ピザ生地を顔に貼り付けた写真をtwitterに投稿して炎上
  • 8月23日
    ファミリーレストラン店員、サラダバー置く場所に下から顔出した写真をtwitterに投稿して炎上
  • 8月24日
    ピザショップ店員、冷蔵庫に入っている写真をtwitterに投稿して炎上
  • 8月30日
    スーパー店員、廃棄食品を口に入れた写真をtwitterに投稿して炎上
  • 9月1日
    レストラン店員、有名人の食べ残しを食べたことをtwitterに投稿して炎上
  • 9月2日
    居酒屋店員、食材で悪ふざけをする写真をtwitterに投稿して炎上
  • 9月10日
    ピザショップ店員、ネズミの死骸をピザの横に置いた写真をtwitterに投稿して炎上
  • 9月11日
    焼肉屋店員、厨房で尻を出した写真をtwitterに投稿して炎上
  • 9月21日
    土産物屋店員が、有名俳優のクレジットカード番号が記載されたレシートの写真をtwitterに投稿して炎上
  • 9月29日
    保険会社社員、電車の網棚に寝そべる写真をmixiに投稿して炎上
  • 10月4日
    ピザ屋店員、配達前のピザに舌を出す写真をtwitterに投稿して炎上

 

 うーん、まとめている内に、頭が痛くなってきました。。。いずれの件も、すぐに、店舗名・本人の氏名・学歴・家族構成など、店舗と本人に関連する情報が特定されています。そして、店舗は、謝罪、閉店、休業、商品の廃棄、清掃などに追われ、従業員も、解雇などの厳重処分を受けるだけでなく、社会生命を抹殺されることになります。

 特に怖いのが、「過去の投稿」が発掘されて、炎上するケースも、多いということです(数ヶ月前の投稿が発見されて炎上されるケースも目につきます)。最近は、さすがにこの手の事件のニュースが広まり、問題投稿は減ってはいると思いますが、以前の投稿のことを忘れていて、それが後になって発覚、ということは、十分にありえます。

 基本的に、飲食店がらみで多い事件ではありますが(問題が分かりやすいので)、SNSを利用している社員が多いIT業界でも、決して人ごとではありません。

 

 例えば、エンジニアが、自分がデザインした(公開前の)サイトの写真を、軽いノリでtwitterに投稿したり、何度も修正要求してくるクライアントにうんざりして、(クライアントの実名こそ出さないにせよ)制作の愚痴をtwitterに投稿したりして、それがクライアントに見つかって、騒ぎになったという話も、聞いたことがあります。

 社員のSNSの利用、いや、もはや「SNSテロ」は、現在の企業にとって、大きなリスクとなっているのです。

 このリスクに、企業はどう立ち向かえばいいのでしょうか!?

 

従業員のSNS利用は止められない

 

① SNS利用の一律禁止

 とりあえず、禁止するのが手っ取り早いだろうと、従業員のSNSの利用を一律に禁止するやり方です。

 ですが、これには2つの点で問題があります。

 まず、1つ目の問題として、このような一律禁止は、法的に無効だということです。従業員には、SNSを通じて表現活動をする、という表現の自由があるので、一律禁止は、会社による従業員の私生活に対する過剰な干渉になるからです。

 それに、2つ目の問題として、従業員から大きく反発を受けることになります。IT企業の従業員なら、SNSを通じて情報収集、人脈構築をしている人が多く、一律禁止は、従業員にとって大きな不利益になるからです。

 このように、SNSの一律利用禁止は、法的にも無効ですし、従業員からの反発が大きいので、現実的ではありません。

 

② アカウントの届出制と投稿のチェック

 それでは、従業員にSNSのアカウントを届け出させて、会社側で投稿を日々チェックして、問題投稿があった時点で、即座に従業員に連絡して投稿を削除させる、というやり方はどうでしょうか。

 確かに、これはかなり効果的な手法です。従業員も、会社側がチェックしていると思えば、問題になりそうな投稿は、控えるでしょう。実際、このような対策を取っている会社もあります。

 ですが、これにも2つの点で問題があります。

 まず、1つ目の問題として、このようなやり方は、法的に無効になる可能性があります。SNS利用の一律禁止ほどではないにせよ、やはり従業員の私生活に対する過度な干渉になるからです。

 また、2つ目の問題として、従業員から反発を受けることになります。会社がSNSを監視しているなんて、気持ちの良い職場環境ではないですからね。

 

③ 会社のPCからのアクセス制限

 会社のPCからSNSへのアクセスを、制限する手法はどうでしょうか。ある程度の規模の会社では、会社のPCから、2ちゃんねるなどへのアクセスを制限する設定にしています。

 しかし、これにも問題があります。従業員がSNSを利用する場合、会社のPCを使う場合もありますが、スマホを使うことのほうが、圧倒的に多いです。そのため、会社のPCからのアクセス制限をしたところで、あまり意味がありません。

 あれもダメ、これもダメ、ではいったいどうすればいいのでしょうか? そこで、「効果があって、法的にも有効な」解決策を、徹底解説したいと思います。

 

従業員のSNSテロを防ぐ実践的な方法

① SNS利用ガイドラインを作る

 SNSで不適切な投稿をしてしまうのは、メディアリテラシーが欠けているからです。自分の投稿を、自社の取引先やユーザー、炎上事案が大好きな暇人が見ている可能性があり、ひとたび不適切な投稿をすれば、どんな事態になるのか分かっていれば、最初からそんなことはしません。

 そこで、「SNSで、どんな投稿をすると、どんなことになるのか。どんな投稿ならしても構わないが、どんな投稿はしていけないのか。」について、ネットの炎上事案などを具体的に紹介しながら、分かりやすい内容の、SNS利用ガイドラインを作りましょう。そして、それを新入研修や、定期的な社内研修で、従業員に周知しましょう。

 「そんなことまで、いちいちこっちが教えないといけないのか!?」と思うかもしれませんが、言われなければ分からないが、言えば分かるのが、最近の若者です。ちゃんと教えてあげましょう。

 

② 誓約書を提出させる

 SNS利用ガイドラインを作って周知しても、それを無視して(気にせずに)SNSを利用する従業員も、中にはいるでしょう。そこで、

  • SNS利用にあたっては、取引先やユーザー、投稿を炎上させることが好きな人が、自分の投稿を見ている可能性があることを、十分に注意すること。
  • 取引先やユーザーに関する情報、業務に関する情報、その他機密情報は、一切投稿しないこと。このような投稿は、機密情報の漏洩にあたることを自覚すること。
  • 取引先やユーザー、その他投稿を見た人が不快に感じるようなことは、一切投稿しないこと。このような投稿は、会社、取引先やユーザーに損害を与えるだけでなく、自分にも不利益になることを自覚すること。
  • これらの誓約に違反した場合は、会社から懲戒処分を受けたり、損害賠償を請求される可能性があることを、了承すること。

 

といった内容の誓約書に、署名・押印をしてもらい、会社に提出してもらいましょう。

このような、従業員の危機意識に直接訴えかける方法は、大きな効果を発揮するでしょう。

 

③ 就業規則で規定する

 ここまでやっても、不適切な投稿をする従業員が、いないとは限りません。そのような投稿が行われた場合に、きちんと懲戒処分をすれば、さすがに二度と不適切な投稿はしないでしょうし、他の従業員にも、注意喚起が期待できます。

 ですが、従業員に懲戒処分をするには、就業規則上の根拠(懲戒事由)が必要です。そしてこれが、きちんと規定されていない就業規則も、目につきます。

 

 そこで、就業規則の中で、機密情報の漏洩行為や、会社の信用・名誉を傷つける行為を、禁止行為として規定すると共に、それに違反した場合は、懲戒事由に該当することを、きちんと規定しておきましょう。そして、就業規則のことを、①と②の際に、併せて説明しておけば、より①と②が効果的になるでしょう。

 

 従業員がSNSを利用することは、IT業界では避けて通れません。今回の記事で解説した方法を駆使して、リスクを少しでも下げられるようにしてくださいね。