HTP入居企業の中でも大成功例の、ベラルーシのゲーム会社「Wargaming」のミンスクオフィスを訪問しました。

エントランスには本物の戦車があります 

2010年にリリースした戦車ゲーム「World of Tanks」が世界的大ヒット作となり有名になったWargamingですが、今ではアメリカやイギリス、そして日本や韓国にも支社を設け、グローバルで5000人以上の従業員が働き、企業価値も15億USドルにまで急成長しています。

今回、WargamingのBusiness Development Product MnagerのDmitryさんや、子会社のInData LabsのDEOのIlyaさん、Head of Business DevelopmentのSergeiさん達から、Wargamingグループのビジネスについてお話を聞きました。

驚いたのが、もはやWargamingグループの事業はゲームだけではなく、企業向けVRや、AI・ビッグデータなど、様々な領域に広がっていて、まさにITコングロマリットになっていることでした。

リハビリテーションVRを体験中!まだ試作版なので、画面はマスキングしてます

・Wargamingは現在はゲームのみならず、様々なIT関連のビジネスを手がけている

・社内起業をするケースもあれば、外部リソースを活用してオープンイノベーションもやるケースもある

・その中でも、今回特に紹介したいのは、企業向けのVRビジネスと、子会社のInData Labsが手がけるAI・ビッグデータビジネスについて

企業向けVRビジネスについて

・VRは、ゲーム以外の産業分野でも大きな可能性を秘めたテクノロジーと考える

・例えば、工場や機械の整備や操作をVRでトレーニングできれば、現地に行く必要も、実機を使う必要も、再現した設備を用意する必要もない

・企業事故の要因の2位は管理間違い。これを防ぐためにはトレーニングが重要であり、VRはその有効なソリューションになる

・今回映像で紹介するのは、電車運転手VRシュミレーター。実際の運転席、操作機器を精密に再現している。これを使えば、実機やシュミレーターマシーンを使わずにトレーニングが可能

・他には、機械設備や建築の分野でVRで構造やデザインを検証できるようにすれば、模型を作る必要がなくなるし、構造やデザインを理解しやすくなる

・さらに、顧客対応などのコミュニケーション系のトレーニングもVRで行うことができる。日常作業から緊急状態まで、あらゆるシチュエーションのモデルを用意することができ、安全に低コストに臨場感のあるトレーニングが行える。

・特に、災害や事故対応などをVRで練習するのは有用

・当社はゲームを長年開発してきた経験があり、そこでのソリューションをVRに活用できる

・ゲームは、分かりやすいUIや、快適な操作性、美しいグラフィックや、親しみやすいキャラクター、適度な難易度やレベルアップの楽しみが重要。我々にはその知見がある

・他の企業が開発するVRはそこが弱い。真面目に作りすぎている。現実をそのまま再現しても楽しくはない

・今日デモンストレーションをするのは、ヘルスケアの分野でのVR。病院やリハビリ施設などの医療機関に提供することを予定している、脳の障害で身体の機能(バランス感覚)が低下した患者向けのリハビリテーションソフト

・Microsoftの市販のVRキットを利用するので、極めて低コストで導入できる。VRヘッドセットを被り、モーションコントローラーを、一つはベルトに止めて、もう一つは地面において、身体の傾きを測定する。あとは、ゲーム内のキャラクターを、身体を傾けることで操作して、ステージをクリアしていく

・このゲームは、手軽に、楽しく、身体のバランス感覚を鍛えることができる。徐々に難易度が上がることや、前回のパフォーマンスと比較できるなど、リハビリの成果を感じることが出来て、継続するモチベーションが湧く

・一般的に、リハビリの機材は高価で大きいため、医療機関としても導入が負担であり、また、医療機関まで行かないと利用できない患者にとっても負担であり、さらに、1日に利用できる人数が限られていた。しかし、このVRを使えば、患者は、自宅で手軽にリハビリをすることができる

AI・ビッグデータビジネスについて

・InData Labsは、AIソフトウェアの開発やビッグデータに関するコンサルティングを得意とする会社で、Wargamingの子会社。2014年に設立された

・特徴として、コアテクノロジーのAIがあって、更に、顧客の産業ごと(金融・広告・小売・自動車・デジタル医療・エンターテイメント等)に専用チームを作り、その産業にフォーカスしている

・クライアントは、特定のAIのエンジンが欲しいのではなく、AIを活用したワンストップサービスが欲しい。それに対して、トータルのソリューションを提供。よくあるAIスタートアップは、AIのコアな部分しか開発していないので、顧客側からすると専門性がないと使えないけど、InData Labsその周りもサポートできる

・AIを活用したテキスト分析や画像分析が得意。例えば、写真や動画を撮影すれば、写っている商品がどの商品化表示されて、購買ページへのリンクが表示されたり。別に商品に限らず、例えば機械ならその部品が何の部品かを表示したり

・複合予測分析も得意。例えばWebサイトを分析して、どこで離脱するか、どうすればクロージングできるかを予測分析して改善に役立てるとか

・各産業ごとのプロジェクト事例は多数あるが、例えば、金融では、データ分析と予測モデル(借り手の信用リスクを評価)による貸付金回収の効率化を実現した

・せっかくデータを保有していても、みなさんどう活用すればいいかわからない。当社は各産業ごとのアルゴリズムを持っているので、分析、実証、生産、改善、のサイクルをワンストップで提供できる。データに基づくビジネスが可能になる

日本でのビジネス展開について

・Wargamingは現在、日本でビジネスを発展させたいと考えている。単なる代理店ではなく、SIやセールスを対応できるローカルパートナーになってくれる日本企業を探している

・InData Labsは、日本のArgentum Bullet Consulting株式会社を代理店として、日本でもビジネスを展開している。現在、日本の複数の企業に対して、様々な分析システムに基づくサポートを行っている

というわけで、今回お話を聞いて、成功したゲーム会社がITコングロマリット化していくのは日本と同じだなと思いました(日本だと、DeNAグループがまさにそれですね)。

BtoBのIT企業(特に日本の大手SIer)が作るプロダクトはUIが終わっていることが多いですが、一般消費者のプレイのしやすさを徹底的に(それもデータに基づく分析で)追求したゲーム会社のプロダクトは、その点で優位性がありますよね。

実際、リハビリテーションVRを体験させてもらいましたが、セッティングも楽で、UIも分かりやすく(簡単な説明を受けただけですぐにプレイできました)、キャラクターも可愛らしく、ゲームとして純粋に面白かったです。

また、最新のゲーム業界では、徹底したデータ分析に基づいてアクティブユーザー率等を高めていることが知られていますが、そこで培った技術がAI・ビッグデータビジネスに役立っているのでしょう。

Wargaming、InData Labsとビジネスをやってみたい方は、ぜひ問い合わせをしてみてください!

Wargamingは日本法人があり、InData LabsはArgentum Bullet Consulting株式会社が窓口になるとのことです。

日本好きのセルゲイさん。息子さんは日本語を勉強中