2012年からクアラルンプールに在住している日本人起業家の石川さんとお会いしてきました。
石川さんにお会いするのは2015年10月以来、3年ぶりです。
今でこそ世界中を旅しながら、知人の紹介で現地の方と会うことが日課になっていますが、実は石川さんこそ、僕が初めてそういう活動をした方なのですね。
石川さんは日本でコンサルティング会社で働いた後、表参道で書道教室を開いて書道家として活動される中で、海外でビジネスがしたくなり、マレーシアの将来性やビジネス環境の良さを見込んでクアラルンプールに移住されました。
これまで様々なビジネスを手がけられていますが、現在のメイン事業は二つあるとのことです。
一つは、英語を学びたい日本人(学生・社会人)の留学の支援事業を行うKNAIN社のビジネス。移住当初から手がけられているビジネスです。
もう一つは、ブランディング・コンセプトメイキング・デザイン・SNS運用・イベント企画など、企業の活動をクリエイティビティを使って支援するNollyz社のビジネス。2016年に立ち上げられたビジネスです。
KNAIN社は既に自分がいなくても回る仕組みができているので、現在力を入れているのはNollyz社のビジネスとのことで、今回そちらを詳しくお話をお聞きしましたが、石川さんのお話は一人の起業家のビジネスストーリーというより、多くの人にとってビジネスをする上で大きなヒントになる話が満載でしたので、ぜひ皆さんにも知ってもらいたいと思います!
・書道家としての活動はマレーシア移住当初から現在も続けていて、クアラルンプールの伊勢丹で毎週土曜に書道教室をやっている
・そういったアーティスト的な活動が評価され、企業からロゴの製作などを依頼されるようになり、そこから派生してクリエイティビティが関わる仕事を色々と頼まれるようになり、2016年にNollyzを立ち上げた
・マレーシア大手のショッピングモールの新規出店店舗のコンセプトデザインからローンチまでのスケジュール立て、イベントマネジメントなどの総合的な仕事や、世界的なホテルブランドがクアラルンプールにオープンした新規ホテルのブランディング支援など、大きな仕事も舞い込んできている
・日本企業のマレーシア現地法人からの依頼もあるが、むしろローカル企業からの依頼が多い
・アウトバウンドでの営業はせず、紹介、口コミで案件が舞い込んでいる。人脈社会のマレーシアで、外国人(日本人)である自分がそれができたのは、良いクライアントに恵まれたから
・当初、日本の最先端のビジネスノウハウを武器にタイムマシン経営で行けるかなと思っていたが、急速に発展するクアラルンプールでそんなものは通用しなかった。国内の共通言語が英語で、欧米の情報をネットを通じて簡単にキャッチアップできてしまう。むしろ日本よりもキャッチアップが早いのでは
・マレーシア人は英語が話せるだけでなく、中華系は中国語が話せて、インド系はヒンディー語が話せて、それぞれ言語圏としては巨大だし、マレー語はインドネシア語と互換性があるので、国全体で見れば非常に巨大な言語圏にリーチできる。だからマレーシアで成功することは大きな可能性を秘めている
・マレーシアでは日本企業といったら無印、ユニクロなどの、シンプルさの中にストーリーがあって、クラフトマンシップというイメージ。それが日本人である石川さんの経営するNollyzのイメージにも繋がっている。マハティール政権は親日なので、日本人にとってビジネス環境も良い
・とはいえ、石川さんはNollyzを自身の属人的な会社にしたくない。表参道の書道教室もビジネスとしては成功していたが、属人的なビジネス(自分がいないと成り立たない)になっていたことが嫌で閉じてしまった。色んな能力を持ったタレントとしてのスタッフを集めて、チームとして仕事をしたいし、今はそういうスタッフが揃っている
・2019年1月現在、Nollyz社は石川さんの他に日本人スタッフが1名(もうすぐもう1名がジョインする予定)、マレーシア人が5名。採用は苦労していない。知人が石川さんのビジョンに共鳴して参加してくれたり
・いくら優秀でも、嫌な人とは仕事をしたくない。チームでワークしない。クッションになってくれる、そういう人を見つけることを意識している
・石川さんは1981年生まれで現在37歳だけど、マレーシアではむしろシニア扱い。マレーシアは平均年齢が20代。綺麗な人口ピラミッド
・スタッフはみな若い。今の感性がある。ソーシャルメディアの扱いなどは、彼らのほうがよほど上手いから任せている
・センターがいなくても回る、哲学がある組織を作りたい。最近日本で流行っているオンラインサロンは面白いと思うけど、サロン主の属人的なビジネスなので、自分はそういうのは手がけない
・Nollyz社のミッションは「クリエイティビティを使ってすべての経験を面白くする」
・ネットで何でもつながるこの時代、リアルタイムの経験、そこにいないと体験できない、そういうことの価値が高まっている
・生態系を生み出したい。自分が面白いと思うビジネスのスタイルを確立させて、ASEAN各国や欧米にも広げていきたい
・今はコワーキングスペースの「colony」に入居(個室契約)している。colonyはオーストラリアでソーシャルアプリを作って若くして上場してバイアウトした起業家がオープンしたコワーキングスペースで、クアラルンプールに3店舗ある。オフィスにこもって机で仕事するのではなく、働く場所を変えたり他の人と交流できるコワーキングスペースの方が性に合っている
・ITを活用して世界のどこでも働く、みたいなフリーなスタイルを以前は目指したこともあったが、自分の性格的に、生身の人間が喧々諤々で議論しながら振り絞ったものがローンチして受け入れて皆で歓喜する、みたいな体験が好きなので、今はこうしてクアラルンプールで腰を据えてスタッフと一緒に仕事をするのが楽しい。スマホやPCの画面ばかり見ていると、確かに最新の情報はキャッチアップできるけど、自分にとってなにか大事なものが得られていない感覚
・マレーシアは混合国家なので、一体感・統一感が良くも悪くもなく、国としての文化が育ちにくい。それぞれの民族が、それぞれの母語を喋っている。共通言語は英語だけど。だから、例えばマレー系の人がスペースを作っても、イスラム教徒だから、お酒を飲む場所がなかったり、そういう文化的なすれ違いが起きがちだが、だからこそ第三者的な日本人である自分が、全部のカルチャーを俯瞰していい感じで間を取ることができる。それをアート的な観点、デザインシンキングで実現する
・やりたいことをやっている状態にすることが大事。例えばラーメン屋はレッドオーシャンだけど、成功する人は成功はするし、ブルーオーシャンかと思ったらそもそもオーシャンがないなんてこともある
・成功者の話はたいていポジショントーク。成功した人が自己肯定のために「こうあるべきだ」と後付で言っているだけのことが多い。結局は自分がやりたいことをやるのが大事。自分もそこまで戦略的に考えていたわけではなく、やりたいことをやっている中で人の縁に恵まれて今の状態に至っているだけ
・これまで色んなビジネスをやってきて、安定すると飽きてしまうことが多かったが、ようやく自分が生涯をかけて打ち込みたいと思えるビジネスが今できている。自分のビジネスが社会や人の価値観に影響を与えられることが楽しい
石川さん、今回も本当に勉強になりました。
僕も、世界を旅しながら働くスタイル、そういう働き方があるんだということを発信し続けて、社会や人の価値観に影響を与えられるように頑張っていきます!