プノンペンでデザイン事務所「OS![オス]」を経営されている奥田さんとお会いしてきました。
奥田さんは早稲田大学・大学院で建築学を学んだ後にリンクアンドモチベーションに新卒で入社され、ベンチャー企業だった同社が上場するまでを社員として経験された後、30代で独立起業されたそうです。
ただ、独立して1年後、ノマドワークに興味を持たれ、奥様と二人で世界を旅しながら仕事をされるようになり(奥様もパン作りを学んでいて、世界のパンに触れたかったので)、最終的に世界33カ国60都市を回った後、2013年にカンボジアの首都プノンペンで、奥田さんはデザイン事務所、奥様はベーカリーを起業されたそうです。
奥田さんから、カンボジアでのビジネスについていろいろ面白い話をお聞きしたので、シェアします!
・起業にあたって、マレーシア、フィリピン、カンボジアが候補に上がったが、外国資本100%保有の会社設立が認められること、発展の余地がまだまだあること、先行者がいなくて先駆者になれることなどから、カンボジアを最終的に選択した
・現地の人の英語力に関しては、もちろんマレーシアやフィリピンには劣るものの、それでもビジネスや生活で困ることはない
・奥田さんのデザイン事務所では、映像制作、サイト制作、デザイン、内装など、幅広い仕事を受注している。起業当時、これらの仕事を日本クオリティで提供できる競合は全然なかったので、先駆者となれた
・クライアントの多くは日系企業。日本で小規模のデザイン事務所をやっていたら、大手の広告代理店のひ孫請けくらいにしかなれないが、ここでは大企業から直接受注することができる
・日系企業のネットワーク、紹介によって仕事はたくさん来ている。事務所は日本人スタッフとカンボジア人スタッフで合計10名未満だが、ありがたいことに十分な仕事が回っている
・早稲田の同窓会組織「稲門会」は世界中にあって、カンボジア稲門会にも所属していて、そこでも繋がり、仕事の紹介が生まれるし、今はまだできていないASEAN稲門会の立ち上げにも、今後関わっていきたい
・いただいた仕事は幅広く受けているが、今力を入れているのが企業向けの研修映像の制作。それも、カンボジアの企業でなく、タイやマレーシアなどの(他の東南アジア諸国にある)企業からの依頼
・タイやマレーシアなどの東南アジアの中でも発展している国は、デザイン力のある事務所が増えているものの、費用も高騰している。しかし奥田さんの事務所はカンボジアにあるので、人件費などのコストが安く、価格優位性がある
・また、カンボジア人スタッフが撮影のためにその国を訪れることが、スタッフのモチベーション向上につながる。カンボジア人にとって、バンコクやクアラルンプールは大都会で、そこに行くことが大きな刺激になる。リンクアンドモチベーションで働いていたこともあり、社内のモチベーション作りは重視している
・奥様のベーカリー「Bagel and Bakery SANCHA」は現在プノンペン市内に2店舗ある
・起業当時、日本クオリティのベーカリーはカンボジアには全然なかった。だから先駆者になれた ・顧客は、日本人3割、外国人3割で、意外なことに残りはカンボジア人。価格帯は、確かに現地のベーカリーよりは高いものの、外国資本の高級ベーカリーよりは安く、カンボジア人でも買える価格帯の商品もあるし、このクオリティでこの値段というのはコスパが良い (僕もカレーパンとクリームパンをいただきましたが、とても美味しかったです!)
・奥様としては、チェーン化とか、高級ブランド化とかするつもりはなく、現地に馴染んだ街のパン屋さんを作って、自分で店舗を回したかったので、高級路線に行ったり、多店舗展開は考えていない
・カンボジアを語る際は、やはりポルポト時代の問題は避けて通れない。あの大虐殺によって、知識層の大部分が亡くなったため、ポルポト政権崩壊後は、海外に避難できたorあの時代すら生き残ることができた超エリート層と、農村部の貧しい人に、国民が二分されてしまった。
・とはいえ、あれから月日が立ち、完全に分離していた両者が徐々に交わるようになり、その中で中間層も形成されつつある。そういった、中間層マーケット向けのビジネスは、今後発展の余地があるだろう
・例えば、コンドミニアム投資は、エリアによっては過熱しすぎではないかと言われてきている
・不動産投資の得意な中国の人たちは、今後の値上がりが期待できる郊外の土地を買い漁っている
今回お話を聞いて、競合がいない(だけど先行事例がない)領域に飛び込んで道を切り開いていく人は格好いいなと思いました。 東南アジアで企業研修映像の製作を検討されている日系企業の皆さんは、奥田さんに相談されるといいと思います。 それと、プノンペンで美味しいパンを食べたい人は、Bagel and Bakery SANCHAにぜひ行ってください!