IT企業に特化した弁護士藤井が運営するサイト

弁護士 藤井総の
メールマガジンに登録する

中小企業がプラットフォーマーに打ち勝つ方法

MIT(マサチューセッツ工科大学)を始めとした数多くの有名大学がキャンパスを構える大学都市として有名なだけでなく、今やロボティックスの分野でアメリカで最も重要な都市となったボストン。

(お掃除ロボットルンバで有名なiRobotの創始者がMIT卒業生で、iRobotで働いていた人たちがスピンオフしてボストンにロボティクスベンチャーを次々に創業したのです。そのため、iRobotはロボティックスの祖先のような立ち位置です)

キモい4足歩行ロボットで有名なボストン・ダイナミックス社や、Amazonの倉庫で荷物を運ぶロボットで有名なKiva社などのロボティクスベンチャーが次々に創業されるこの都市の「エコシステム」は、地元企業・地元機関が中心となって設立されたインキュベーターNPO「MASS ROBOTICS」によって支えられています。

そんなMASS ROBOTICSでアドバイザーを務めているFernandom教授に、いかにテクノロジーを活用してイノベーションを引き起こすか、そして活用できない企業はどうなっていくのか、というお話を聞きました。

【iRobotがお掃除ロボットを作ったことのインパクト】
-労働力を使わずに掃除ができる(いままで雇っていたハウスキーパーがいらなくなった)
-ロボティックスは単体で使うのではなく、他のテクノロジーと繋げることでさらに便利になる
(例)自動運転車(ロボティックス×AI)
-ロボティックスの出現でトランスフォーメーション(変化・改革)が起こっている
-テクノロジーが様々な業界を変えている
(例)Uber(タクシー業界)、Airbnb(ホテル業界)、Tesla(自動車業界)
-テクノロジーを必要に迫られて使うのではなく、テクノロジーを使って新しいビジネスを作って欲しい。他の業界に参入して欲しい。
-テクノロジーにはAIが必要
-Nest社はAppleで働いていた2人が作った会社で、家屋の温度調整をAIが行う機器を開発
-Nest社が作ったAIによって、家具とテクノロジーが繋がる
(例)AIが学習して家庭と関係をもって新たな価値を生み出す
-大手の会社だけができることではない。小規模な会社でもテクノロジーによって産業を生み出している
(ネストはGoogleに30億ドルで買収された)

【テクノロジーを活用しなかったために衰退した会社の例】
例1:IBM
-歴史をもった企業。これまでは時代の変性を見ながらトランスフォームしてきた
-ここ5年間で売上が25%減
-原因:早く変化するテクノロジーに追いつけなかった
-マイクロソフトにも同じ傾向が起こっている
-IBMはもともと部品を作っていた
-1990年代に方向展開をしてサービスを提供する企業へ
-サービスの次は、プラットフォームに参画しているかが企業の生き残りの分かれ目となっているが、これに乗り遅れた
-新しい分野にいつ、どうやって、参入していくかが全ての企業にとって課題

例2:マイクロソフト
-iPhoneとAndroid以外にスマホは必要ないと判断してしまった(Windows Phoneの投入が遅かった)
-Skype(8.5Bドル)やYammer(1.2Bドル)、NOKIA(75億ドル)を買収したがどれもうまくいかなかった(何回も失敗した、急成長する手前で買わなくてはいけないのに、出遅れている)
-新しい分野に参入するときにあまり早すぎても仕方ないが遅すぎてもいけない

→これら2社にはプラットフォームが足りなかった

【今まさに伸びている会社の例」
-1990年代にできたAmazonがなぜここまで急成長したのか
-常に再投資、開発をしてきた
-Amazonは本だけに注力した小売だったが、今となっては「小売の王様」
-Amazonの成功の秘訣:ロジスティクス
-数年前には注文があったらその日に実現したいと検討
-倉庫で働いている人間だけで対応していたら実現不可能
-流通倉庫では、人間が充填するのに取りに行かなくてはならず、時間がかかってしまう
-Amazonはそこでロボットを使った(倉庫ロボットベンチャーのKivaを買収した)
-ロボットは、棚ごと動く。人間が動くのではない(発送が逆)→働く従業員も少なくて良い
-生産性は人間がやるより3倍高い
-他の産業分野にもロボティックスを活用して進出している
(例)Whole Foodsを13.7Bドルで買収。
-小売で大手企業のウォールマートは非常に心配している(Amazonに取られてしまうのではないか、と。既に市場価値はAmazonのほうがたかい)
-Amazonをコピーしただけではウォールマートは勝てない
-我々は自分で作ったビジネスを「disrupt」(破壊)しなければならない
-自分の才能をぶち破ってでも進めていかないといけない
-Amazonは紙の本屋だったが、電子書籍(紙の本の売上を減少させるもの)をすぐに取り入れた
-Amazonはクラウドサービスのリーダーでもある(AWS)
-Amazonに音声認識「アレクサ」を真似てGoogleも出している
-いまや映画の業界にも参入(プライムビデオオリジナル作品)

プラットフォームとは:
-テクノロジーベースのシステム
-システムを基盤にできるもの
-価値:プラットフォームに乗る製品を作ればどこの産業にも参入できる。横展開できる
(例)AppleがなければiPhoneの価値もない
-Google Mapは無料。他でマネタイズしている

Advantages of a platform model:
-急速に成長する
-ユーザーロックイン(一回ユーザーを取り込んだら離れない)
-競合の心配をしなくてもいい
-異なる分野に楽に参入できている

とても面白い講演だったので、終わった後に妻と僕から質問をしました。

どちらの質問も、これまで納得のいく答えが見つからない疑問でしたが、とてもクリアな答えをいただけて本当に良かったです。

【妻の質問】
テクノロジーの兆候にいち早く気づいて参入することが大事とのことですが、どうやってその兆候を掴むのですか?

【答え】
未来のシナリオを考えよう。
ジェフ・ベゾス(Amazonの創業者)は、最近はロケットの打ち上げ(Blue Origine)に力を入れています。ジェフ・ベゾスには、人々が海外旅行に行くかのように宇宙旅行に行く、宇宙旅行が一大産業になる未来が見えているのです。海外旅行だって、最初は高価で殆どの人が行けなかったけど、今はそんなに贅沢なことでもないですよね。

【僕の質問】
プラットフォーム戦略は1社が全部持っていってしまいます(Winer takes All)。そんな勝者になるのが難しい中小企業が生き残るためには、どうしたらいいのですか?

【答え】
方法は2つ。
第1に、初期にその分野にできるだけ早く参入して、先行者メリットを享受しましょう。中小企業であっても先行者になれば、勝つことは難しくありません。
第2に、既存のプラットフォームを前提に、それを打ち破る戦いを挑みましょう。例えば初期のGoogle Mapは、経路検索に際して道路の混雑状況を考慮できていませんでした。そこで、道路の混雑状況を検索する機能を開発していたベンチャーを買収せざるを得なかったのです。

弁護士 藤井総のメールマガジンに登録する

この記事を読んだ方は
こんな記事も読んでいます

人気記事ランキング