ベラルーシの首都ミンスクにあるコワーキングスペース「IMAGURU」(イマグル)を訪れたところ、思いもよらずに西陣営(米国・英国)と東陣営(ロシア)の戦いを目にすることになりました。

受付

欧米の著名な起業家がよく講演に来るそうです

プレゼンスペース

プレゼンスペースは沢山あります

グローバルを意識したワークスペース

・5年前にオープン。ミンスク(というかベラルーシ)で第1号のコワーキングスペース。名前は「I am a guru」から来ている

・NPOが運営。政府から建物を借りている。その関係で利用企業は登記はできない

・利用料は1日利用(ドロップイン)で10ドル、1ヶ月利用で150ドル、長期契約の割引制度もある

・フリーアドレススペースだけでなく専用個室もあるし、会議室やセミナールーム、デザインシンキングルームやskypeルームなど、たくさんの部屋がある(建物の1階と2階を使っている)

・著名人のプレゼン、ハッカソン、起業家同士の交流会、投資家との交流会など、しょっちゅうイベントが開かれている。グローバル企業の創業者や海外のVC、政府関係者が来ることもしばしば

・コワーキングスペースは、今はミンスクでは他に3つある。とはいえ、国際的に発信力があって、海外の投資家や著名人が来るのは、IMAGURUくらい

・利用者はテック系が多い。というか、旧ソ連圏なのでセールスやマーケティングのノウハウがなく、また、国策としてエンジニア育成に力を入れているので、起業と言ったらテック系にならざるを得ないし、マネタイズを考えるのも苦手。まさにテッキーという感じ

・目指すべきはグローバル企業へのバイアウト。とりあえず特定ジャンル・機能に特化したソフトを開発するから、単体でのマネタイズは難しいけど、あとは買収したグローバル企業の方でうまくやってよ、という感じ

・数年前にIMAGURUで開催されたハッカソンで優勝したベラルーシのベンチャー企業「MSQRD」(マスカレード)は、リアルタイムで自撮動画を面白く加工するフィルターソフト(SNOWみたいなやつ)を開発。それがFacebookの目に止まり、買収額は非公開ながら1億ドル以上ではないかと噂される莫大な金額でFacebookに買収された。Facebookアプリのフィードを右にスワイプすると切り替わるカメラのフィルター機能がMSQRDのそれ。これぞ理想例

・運営しているNPO法人は、実は米国と英国から金銭的援助を受けている!

・米国としては、小国、後進国に援助をすることで大国としての(国連内での)役割を果たすというのと、外交関係を強化して国連決議での一票など、国際政治でのイニシアティブを獲得

・英国としては、ヨーロッパ圏内の有望なスタートアップにシード段階から繋がりを持って、将来的に英国に登記をしてもらいたい(それによって雇用や税収を生む)

 

西側諸国の宗主国(米国や英国)と東側諸国の宗主国(ロシアと中国)が、小国、後進国に援助をして味方に引っ張り込もうとする話はよく聞きますが、インフラ投資など典型的なものではなく、スタートアップ支援という側面での話は初めて聞いたので驚きました。

ベラルーシのご近所さんですと、ウクライナは、西側と東側、両方に良い顔をして競わせてお金を引っ張ってくるのがうまいそうです(ただ、それをやると国が混乱して、一部の人間が富を独占するだけになってしまいますがね)。

ちなみに、ベラルーシはロシア寄りの国ですが、IMAGURUにはロシアマネーは入ってないそうです。やはりITテックの領域は西側が強いですね。

これがMSQRDの開発したフィルターソフト。Facebookのフィードをスクロールしてると誤作動でカメラが起動することが多くて困ります